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組織の成長を阻害している要因と成長のストッパーの外し方

ライフサイクル

バーチャル経営塾『2代目社長の生き残り組織再生論』

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組織の成長を阻害している要因と成長のストッパーの外し方


企業が成長を目指す、それは当然のことです。収益を増やし、社会に貢献し、社員の生活を確保し、取引先金融機関や株主、自治体や国などのステークホルダーに利益を配分する。
そういった健全な企業活動を継続していくことこそ、経営の真髄だと言えます。
しかし、どの企業でもノーリミットで成長軌道を突き進めるわけではありません。
遅かれ早かれ、必ずどこかで、滞や衰退などの時期も経験することになります。

では、そんな成長の阻害要因にはどんな共通点があるのでしょうか?
今回は、「企業の成長ストッパーの外し方」を解説していきます。

企業の成長モデル

ライフサイクル

企業の成長も、人間のようにいくつかのステージに分けられます。よく使われるツールに「企業成長ライフサイクル」というものがあります。
(※上記図参照)

この考え方に従うと、企業の成長は以下の4つに分けられます。
 1 導入期
 2 成長期
 3 成熟期
 4 衰退期

この考えのメリットは、経営者が用いる戦略は、「いつでも正しいものではない」ということが明確になる点です。
例えば成長期には、大きくなる市場規模に合わせて、できるだけ市場シェアを拡大していくことが課題になります。

そのため人材を雇用し、管理体制を強化していくことが経営には求められます。しかしやがて成熟期や衰退期を迎えると、人材を増やすことはむしろ自社の首を絞めることにもつながります。
むしろ人員の整理や事業の統合を行い、事業の生産性を高めたり、事業からの撤退を考えることが経営には求められるでしょう。

・「企業」ではなく「市場」に特化した概念

 しかし、当コラムのテーマである「ストッパー」については直接関係ないため、今回は深入りしません。
ジェフリー・ムーアの『ライフサイクルイノベーション』や、『キャズム』、『キャズム2』などを推薦図書として挙げておくに留めます。

また企業ライフサイクルは、「企業」ではなく「市場」に特化した概念であるため、経営者の直接的な行動の指針とはなりにくいという特徴もあります。
そのため今回は、以下のような考え方を軸に説明をしていきます。

戦略の開発・実行のプロセス

2018年に発売され、コンサル業界で話題になった本があります。『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 ~コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする~』という、なんとも大胆な題名の本です。
この本には、机上の空論を振り回し、企業を食い物にするコンサルティングファームの現状が書かれています。

この中で、著者のカレン・フェランは経営者が行う「戦略の開発および実行」のプロセスは以下の5つに分解されると説いています。

1 将来を予測する
2 予測にもとづき、大胆なストレッチ目標を設定する
3 周囲の人々を説得する
4 目標達成に向けて邁進する
5 成功を祝う


この中で5はご愛嬌と呼べるので、実質的に4段階が戦略の開発・実行のプロセスだと考えてよいでしょう。
この分類法は非常に分かりやすいので、この段階に沿って、成長ストッパーとその外し方を見ていきましょう。

戦略プロセス別、成長ストッパー

企業には、いくつもの成長ストッパーが存在します。成長の「阻害要因」と呼んでもよいでしょう。
それらを網羅的に取り上げてみても、自社に当てはめて解決策を考えることは難しいので、戦略プロセス別に、ストッパーと、その解除方法について解説していきます。

1)将来を予測する

一般的に「ビジョン」と呼ばれますが、会社は、経営者が描いたビジョンを現実化させるために活動していると言っても過言ではないでしょう。
そもそもどんな戦略も、ビジョンがなければ始まりません。

また経営者は「投資」をすることが専権事項ですが、不確実な将来に収益をあげるために、
 現実でお金を借りて資本を投入することは、ビジョンが描けているからこそできるものです。

投資と言っても、色々なものがあります。
商品開発や人材の雇用、時には工場や店舗の立ち上げや、数ヶ月間分の運転資金などが必要になります。数百万円から、大きい時には億単位のお金を将来に投資をするわけです。
ここでは、いかに「将来を確実に予測できるか」が運命を分けることになります。

・未来のことを正しく予測することは不可能

 しかし、ゲーテルの「不完全性定理」を持ち出すまでもなく、未来のことを正しく予測することは不可能です。
よく、成功した経営者に「先見の明」があったと言って必要以上に褒めそやす人がいますが、ミネルヴァの梟の例えにある通り、多くの場合は後知恵です。
なぜなら、同じことをしても同じ結果が得られない、つまり再現性が証明できないことがほとんどだからです。

とは言え、頭を使って将来を予測すること自体は、非常に有益です。
将来の計画を立てるためには、多くの人が納得するようなデータやファクトを積み上げていく必要があります。

 その中で、自社の強みや弱みに気づいたり、市場の機会やリスクに気づくことができるためです。
そのように、将来の予測をしていく中で得た、気づきや深い知識が、将来に不確定に起きる事態で正しく経営の舵取りをすることを可能にするわけです。

・「知識不足」と「決めつけ」

 さてここで、将来を予測する時のストッパーを考えてみましょう。
このプロセスで重要なのは、「正確な予測」ができるかどうかですので、正確な予測を阻害する要因を見つければよいわけです。

さて、何がストッパーになるでしょうか?

その答えは「知識不足」と「決めつけ」です。

・知識不足

 未来の予測を正確に行うことはできないとしても、その確率を高めることはできます。
それが知識量です。例えば、自分の周辺のことだけしか知識がなければ、その先に市場がどう動くかを予測することは不可能でしょう。

でも以下のことは、情報を仕入れる姿勢さえあれば収集できます。

 ・この先に施行される業界関連の法律
 ・海外(特に欧米)の先進企業の動向
 ・外国との条約や貿易ルールの変更
 ・為替の推移の予測
 ・人件費の推移の予測
 ・株価のインデックス指数の予測
 ・競合他社の動向
 ・CPI(物価変動)の動向


もちろんどれも、正確に予測することは難しいものです。
しかし、毎日情報を収集していれば、ある程度の変動は予測できるようになります。

・情報収集で知識不足を補う

 中には、このような市場の変動などは関係ない、と思っている方もいるかも知れません。
 あまりに大きい話だから現実味がないという人もいるでしょう。

しかしこれならどうでしょうか。

 ・グーグルのSEOアルゴリズムの変更
 ・消費税(等税率)の変更
 ・荷物の配送料の変更


これらも、情報を仕入れておけばある程度の精度で予測することはできます。
しかも、今年・翌年の収益やキャッシュフローにダイレクトな変更をもたらす要因です。

何が言いたいのかをまとめると、「情報収集をしていなければ、知識不足で将来の予測を見誤る」ということです。
ズバリ、ビジョンが描けない・ズレているのは、知識不足のせいなのです。

・一つの大きな意味のある動きとして捉える

 でもこのような反論が予測されます。
 「来年の人件費が上がるということが分かったからと言って、一体何の影響があるのか?」
 熟練の経営者であれば、一つ一つの情報がバラバラに存在するのではなく、大きな塊を持ったストーリーで見えるはずです。

当然、「来年こういうことがあるから、こうすれば儲かるよ」という個別具体的な情報はありえません。
しかし、アンテナを立てて情報を集めていれば、将来の市場や顧客、競合他社の動きが一つの大きな意味のある動きとして明確に捉えることができるようになるのです。

だからこそ、「予測」ではなく「ビジョン」と呼ぶのです。

どのような事業を行うにしろ、ビジョンが最優先事項です。
もしビジョンが立てられない・ビジョンがブレブレであるという方は、インプットしている情報量を増やしてみることから始めてみてください。

2)大胆なストレッチ目標

予測にもとづき、大胆なストレッチ目標を設定するさて、ビジョンが描けたとしても、それだけでは何も動き出しません。具体的に組織を動かすには、計画を立て「目標」を設定することが必要になります。

しかも、これまで通りで何も変わらないのであれば、目標の意味はありません。よりスピーディーにビジョンを現実のものとするためには、ストレッチのかかった厳しい目標を設定することになります。

このまま何もしなければ達成できないが、創意工夫によってはなんとか達成できそうな、
 そんな際どい目標設定のスキルが求められます。

・ロジカルシンキングの不在

 ではこの時点で、どんなストッパーが存在するのでしょうか?

それは「ロジカルシンキングの不在」です。

プロセスの第一段階は「ビジョン」を描くことでした。
そこでは、右脳的なイメージ力がモノを言います。

しかし第二段階の目標設定では、イメージを具体的な施策に落とし込む力が必要になります。
それが、取りも直さず「ロジカル」な思考です。

ところが、ここで論理的に目標設定できないことが非常に多いのです。
あなたも、「この仕事が一体どう自社のビジョンにつながるのか?」と考えたことはありませんか?

・目標設定を任せる

 あえて二元論で考えてみますが、
 「論理的」「左脳的」な思考が得意だと考える経営者と、「直感的」「右脳的」な思考が得意だと考える経営者の2つに分かれます。
もし自分が前者だと思うのであれば、目標設定を自分でやることができますが、もし後者だと思うのであれば、自分以外の人に目標設定を任せることも考えられます。

理想は、ビジョンを描き、目標設定も自分で行えればいいのですが、経営者も万能ではありません。多くの情報からストーリーを描き、ビジョンを創ることが得意な人が、必ずしも精緻な目標を設定することが得意だとは限りません。

・ビジョンをよく理解できる人に頼む

 この場合、経営幹部などの内部の社員や役員に任せる方法と、経営コンサルタントなどの外部の専門家に任せる方法があります。
どちらが良いとは言い切れませんが、あなたのビジョンをよく理解できる人に頼む(共同作業する)ことが大事です。

3)ビジョンを説得する

周囲の人々を説得するビジョンを描き、目標の設定まで済んだら、
 あとはそれを現実の行動に移していかなければなりません。
具体的には、融資を受けたり、人材を雇い入れたり、試作品を販売したりといった活動です。
この活動は経営者が率先して行う必要があります。
なにせ、ビジョンを描いたのはあなたなのですから、それを現実化する責任はあなたにあるのです。

この時に大事なのは、経営者が周囲の人を説得できるかどうかです。
極端な話、あなたの話に誰も乗ってこなければ、事業は立ち上がりませんよね。
説得力を持って説いて回ることが求められます。

・ネガティブな人や言葉

 ではこの段階には、どんなストッパーが待ち受けているのでしょうか?

それは、ネガティブな人・言葉です。

あなたは、自分が描いているビジョンを現実化しようと、必死に周りを説得します。
しかしそんな時、必ずストッパーが現れます。
ビジョンが革新的であればあるほど、多くのストッパーがあなたを試してくるのです。

・「ネガティブな言葉」を使う人

 どういう人がストッパーなのかというと、「ネガティブな言葉」を使う人です。

たとえば
 「どうせ無理だよ」
 「今までやったけどダメだった」
 「それで成功するなら、とっくに他の会社がやってるよ」
 「うまくいかなかったらどうするの?」
 「今のままで十分じゃない」

といったような言葉です。

 本人としては、良かれと思って言っているのかも知れませんが、これはやる気を削ぐ悪魔の囁きです。
そして、この時点でやる気不足に陥ると、事業を成功させることは確実に無理です。
どうせ無理だと決めつける人、あなたの足を引っ張る人、それはどんなに善い人に見えても、この時点ではストッパー以外の何者でもありません。

・心の中で反論する

 ストッパーを見つけた時の対処法も書いておきます。
それが「心の中で反論する」という方法です。

「どうせ無理だよ」と言う人に、「いや、~だから成功する」と真っ向から反論しても無駄です。

なぜなら、その人は理屈で発言しているわけではなく、なんとなくネガティブな発言をしているからです。
心理学では「認知的不協和」と呼ばれ、「自分は成功してないのに他人が成功するのが疎ましい」という気持ちから生じている発言かも知れません。

そのような人に、論理的に発言したところで「でも、どうせ無理だと思うよ」と再反論(にもなっていませんが)されるに決まっています。
 論破したところで、さらに足を引っ張る言動を加速する恐れもあります。
 あなたのやる気を削ぐだけですので、その人に反論するのはやめましょう。

そのかわり、当然その言葉を受け入れてはいけません。
その人は無視するなり、お礼を伝えるなりしておき、あなたの心の中で論破しておきましょう。

 そうすればあなたのやる気は影響を受けず、無駄な時間を浪費することもありません。
 そして、あなたのビジョンに賛同してくれる、あなたの事業にふさわしいパートナーを探しましょう。

4)目標達成に向けて邁進する

さあ、ビジョンを描き、目標を設定し、周囲の人を説得できたら、いよいよ実行に移す時です。

その事業が斬新なアイデアであればあるほど、難関が待ち受けているでしょう。
思ったようにいかないことだって、毎日のようにあるかもしれません。
しかし、ビジョンに賛同したメンバーなら、乗り越えることができるでしょう。

ところがこの段階でも、ストッパーは存在します。ここでの代表的なストッパーは、「失敗を恐れる文化」です。

・市場の成長速度よりも早く成長する

 公務員のような、これまでと同じことをこれからも継続するような仕事であれば、失敗を恐れることにもそれなりの正当性があります。
しかし、事業を経営している社長が、これまで通りで満足していては、経営力を疑われます。

競合他社を出し抜き、市場の成長速度よりも早く成長するからこそ、株価は上がり、収益は増え、良い人材が集まってきます。
そのためには、他社がまだ取り組んだことのないような施策に果敢に取り組んでいくことが求められます。

・目標は絵に描いた餅に

 最初の内は、社長本人が経営の舵取りをするため、失敗を恐れず進んでいく推進力があります。
しかしどんな企業でも、長い時間を経て、ある程度成長していくと、「官僚組織」的な硬直的な雰囲気が漂うことになります。

 「大企業病」などとも言いますが、一概に大企業だけが陥る病でもありません。

失敗を恐れて保守的になってしまった会社は、改革が必要になっても取り組むことができません。

目標は絵に描いた餅のようになり、ビジョンはもはや風前の灯です。
失敗を恐れるのでなく、目標の達成に向けて邁進する雰囲気作りが、この段階では最も重要なことなのです。

PDCAを回す

PDCAとは、Plan・Do・Check・Actionの頭文字です。
会社の施策の実行とフィードバックを交互に連続的に行うことで、企業の成長のスピードを速める手法です。
 ※詳しくは拙著『回せるPDCA』秀和システム をご覧ください

拙著で詳しく解説していますが、PDCAはある種の「型」です。
スポーツでも、我流でいくら努力をしても伸びないのと同じで、ビジネスにも基本となる型が存在します。その型の代表例がPDCAなのです。

型がないことが成長のストッパー

ゴルフでも空手でも野球でも何でもいいのですが、型がないと、いずれ成長は止まってしまいます。
それどころか、型がないと身体のどこかに無理をきたしてケガの原因にすらなります。
昔の人が、型がないことが原因で失敗することを「かたなし」と呼んだことも、言い得て妙な表現です。
つまり、「型がないことが成長のストッパー」でもあるのです。

型のない状態で何かを始めてみるのは良いですが、我流でやり続けることを「ヘタ固め」などと呼びます。
結局、成長までの時間を伸ばしてしまい、せっかくの成長する機会を逃すことにもなるのです。
そうならないためには、まずPDCAという基本の型をマスターしてください。
「目標設定」「実行」「チェック」「修正」といった行動を徹底して継続してください。

1つのプロジェクト「PDCA初心者」のために

とは言え、PDCAを回せと言われても、一体何から手を付けてよいのか分かりません。
 ましてや「PDCAって必要なのか?」という声さえ漏れ聞こえてきます。
そういう、「PDCA初心者」のために、ここで1つだけコツを教えたいと思います。

それが「1つのプロジェクトからスタートする」ということです。

本来は、PDCAとは社内のあらゆるプロジェクトの管理で行うべき手法です。
しかしいきなりそれをやれと言われても難しくて、途中で挫折してしまうでしょう。
そこで、たった1つのプロジェクトだけで、まずはPDCAをやってみるのです。

1つだからといって簡単ではありません。
プロジェクトに関わるメンバーが、プロジェクトの目標を「他人事」だと捉えていては実行はおぼつかないでしょう。
メンバーには「自分事」として目標を捉え直してもらう必要があります。
まさに当事者意識、または危機感と呼んでもいいでしょう。

1つのプロジェクトから全社に広げる

このような意識の改革ができれば、あとはPDCAはスムーズに回していけます。
1つのプロジェクトで成功すれば、少しずつそれを全社に広げていくとよいでしょう。
成長の止まっていた会社であっても、PDCAを回していくことで、その都度ストッパーの存在に気づくことができ、そして成長の阻害要因を1つずつ外していくことができるのです。

目標の現状維持バイアス

また「現状維持バイアス」と言って、前年と同じくらいか、もしくは前年よりも少ない目標を立てるリーダーもいます。
彼らには、目標を下げることで達成を楽にしたいという気持ちが働いているのかも知れませんが、現状維持は最大の敵です。

組織の成長のストッパーは、こんなところにも隠れているのです。

もし、現状維持の目標をリーダーが提出してきたら、現状維持がいかに組織の成長にとってマイナスなのかを説明し、そして自分自身の成長にもつながらないということを説明しましょう。
その上で、去年を必ず上回る目標を設定していくことを習慣づけるようにします。

 PDCAは、組織で働く人間の一人ひとりを成長させることにもつながり、そうすることで組織全体の成長にもつながる魔法の鍵なのです。

さいごに

企業の成長を阻むストッパーと、その対処方法について解説しました。
あなたの会社にも、いくつか当てはまるものがあったのではないでしょうか。

私はこれまで、多くの企業の成長の阻害要因と闘い、そしてクライアント企業を成長へと導くお手伝いをしてきました。
ここで取り上げたような「ストッパー」に悩んでいる方は、ぜひお気軽にご相談ください。