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会社で「個人目標」を設定するメリットとやり方

バーチャル経営塾『2代目社長の生き残り組織再生論』

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会社で「個人目標」を設定する

メリットとやり方


これまでこのコラムでも再三に渡り説明してきたように、会社は組織としての目標を立てることがとても重要です。
高いパフォーマンスを挙げるためにも、そして収益をあげるためにもそれは必要なことで、異議はないでしょう。
しかし、会社で働く個人が、それぞれ目標を立てる必要はどこにあるのでしょうか?


今回のコラムでは、会社で働くビジネスマンを対象にしています。
もちろん、ビジネスマンを導く経営者にとっても非常に有意義な内容です。
個人目標を設定するメリットとその具体的な方法、ぜひ確認してみてください。

個人目標を設定するメリット

そもそも会社で働くということは、その本分として、会社の収益に貢献することが求められます。
確かに、自分のスキルアップや、社会貢献など、働く意味はそれぞれにあって当然です。
しかしそれは、あくまで会社の収益につながってこそ正当化されうるものなのです。

では、会社の収益目標や売上目標に従いさえすれば、別に問題ないのではないか、そう思う方も多いかも知れません。しかしそれは違います。

高いパフォーマンス

人間は、何の目標も立てずに高いパフォーマンスを発揮することはできません。
コーチングなどでは、「ゴール設定」を非常に重要視しますが、これも「なりたい自分」になるための強力な方法だからです。

・アンテナが立った

 高い目標を設定すると同時に、その目標を達成した状況を強くイメージすることによって、無意識にこれまで見えていなかったような情報が意識に上ってきます。
これを「アンテナが立った」などと表現する人もいます。

例えば、何気なく部活に励んでいた人が、「甲子園出場」という具体的な目標を掲げた途端に、人が変わったように練習に取り組むようになることもあります。
これはまさに、目標設定の力です。
あなたにも「大学進学」や「就職」などで、同じような経験があるのではないでしょうか。

・無意識の力をビジネスに活かす

 このような無意識の力をビジネスに活かさない手はありません。
ビジネスでも、高い目標を具体的にイメージすることによって、これまで見えていなかった情報をキャッチすることができるようになります。

例えば「海外進出!」という目標を立てたとします。
そうすると、これまで何気なく読み飛ばしていたような、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)などの経済ニュースや、日露関係・日中関係などの政治ニュースが目に飛び込んでくるようになります。

・あなたの無意識がフィルタリング

 海外進出に必要となる情報は、あなたの無意識が取捨選択してフィルタリングしてくれるようになるのです。
海外進出に関係する多くの情報をインプットすると、その情報をつなげてアイデアを閃いたり、他の人が気づいていないような斬新な企画を思いつくこともあるでしょう。

頭の中に何も関連情報がない人と、四六時中そのことを考えている人の間には、大きなパフォーマンスの差が生じます。
それが何年もすると、もはや越えられないほど高い壁となるのです。
いつも画期的なアイデアを閃いたり、頭が切れると評判の同僚が、あなたの周りにもいないでしょうか。
彼らはまず間違いなく、個人目標を正しく設定できている人なのです。

モチベーションの維持

高い目標を設定したとしても、あなたが本当にやりたいことでなければ、具体的にイメージすることはできないでしょう。

例えば、あなたが本当に望んでいることが、将来社長になり上場させることだとします。
そんなあなたが、「真言宗の大僧正になる」という目標を立てたとしても、その目標を達成している自分をイメージすることは難しいはずです。

・心から望んでいる目標か

 あなた自身が心から望んでいることでなければ、目標は機能しません。
その理由は、無意識で拒絶するためです。

また、自分がやりたいことなら、当然高いモチベーションで臨むことが可能でしょう。
時に、他人から「もうほどほどにしたら?」と言われても、自分が好きなことなら自ら進んで取り組むことができます。

むしろ、仕事をすること自体に喜びを感じることにもなります。

そんな人が成功しないわけがありません。
 もちろん、そういう人が組織に揃っていれば、会社のパフォーマンスが上がることも当然です。

フロー状態

人間、イヤなことに夢中になれませんよね。
好きなこと、得意なことであれば、時間を忘れて夢中になって取り組めます。
そのような集中した時間を「フロー状態」もしくは「ゾーン」などと呼び、非常に高いパフォーマンスと冷静な判断ができるためには、このように夢中になれる時間がカギだとされています。

・フロー状態が爆発的な生産性を生む

 このフロー状態に組織として入ることができれば、その組織は爆発的な生産性を発揮します。
そのためには、「高すぎず、低すぎない、能力の最大値を少しだけ上回るほどの目標」が条件の1つだと言われています。

目標を立てるクセをつける

親や学校の先生に言われるがまま、自分で目標設定をせずに生きてきたという人も中にはいるかも知れません。
しかし社会人になり、親や先生の代わりに「上司」の言いなりになれば良いかというと、必ずしもそうとは言えません。

そもそも、親や学校の先生は、あなたを教育する義務があります。
また、あなたを立派な社会人に育てたいという目的もあります。
そしてその時のあなたの方は、まだ自分で目標を設定するだけの力が備わっていない、子どもです。


このような条件の下であれば、あなたの代わりに周りの大人が目標を設定してくれることも、あなたがそれに従うことも、問題ありません。
基本的に、あなたにとってプラスになるように目標が立てられているからです。

・目標を立てるクセ

 しかし社会人になれば、たとえ上司であっても、あなたは自らの目標を自分で立てる必要があります。
上司は親や先生ではありません。
そのため、あなたにとってプラスになる目標を立ててくれるとは限りません。
あくまで、会社という組織にとってプラス(この場合は収益・お金)になるような目標があるのみです。


またあなたも、立派な社会人として、自己管理できることを求められています。
上司の言いなりになるような組織人は、想定外の状況を柔軟に乗り越えることができないでしょう。

また、組織や役職などによっては、誰も具体的な目標を与えてくれないという状況だっていくらでもあります。
このような不確実な状況の時にも、目標を立てるクセがついていれば、ビジネスを推し進めることができるのです。

他人の協力が得られる

自分で立てた個人目標を、誰にも言わなければあまり意味はありません。
確かに目標を内緒にしておくという、手法もあります。
しかしビジネスにおいては、宣言することで多くのメリットがあります。

その一つが、他人の協力が得られるということです。

・協力はお互い様

 例えば、あなたが「去年の2倍の営業件数」を目標に掲げたとします。
それを同僚や上司が知っていれば、営業を優先させられるように、他の仕事を代わってくれることもあるかも知れません。

あなたが営業に集中できるべく、取り計らってくれることもあるでしょう。

もちろん、それはお互い様なので、普段からあなたも、周りの人の個人目標を尊重し、協力してあげることが前提条件ですが。

個人目標を設定する方法

個人目標のメリットを見てきましたが、次は個人目標を設定する方法を説明します。
色々な目標設定の方法が考案されていますが、ここでは有名なジョージ・ドーランが開発した「S.M.A.R.Tの法則」という目標設定方法をベースに考えていきましょう。

・S.M.A.R.Tの法則

 ちなみに「SMART」は、以下のそれぞれの単語の頭文字になっています。
 1 Specific:具体的
 2 Measurable:定量的
 3 Attainable:達成可能な範囲
 4 Realistic :現実的
 5 Time-bound:締切を意識

1 Specific:具体的

目標は具体的であればあるほど良いとされています。
なぜなら、目標を達成しようという意志は、目標そのものではなく、目標を達成した自分をイメージすることによって初めて実感できます。
しかし目標が抽象的であれば、目標達成の姿をありありとイメージすることは困難です。すると、目標を達成しようという意志も湧いてきません。

また具体的であれば、今から何をやればいいのか、という行動も分かります。しかし抽象的であれば、何をやればよいのかわかりません。

・何をすればよいのかが明確化

 例えば「売上を(できるだけ)上げたい」という目標は抽象的です。
だったら何をすればよいのか、ということは見えてきません。
しかし「新規の売上件数を30%増やしたい」ということは、さきほどの目標よりも具体的です。
何をすればよいのかも、はっきり見えてきます。

2 Measurable:定量的

「Measurable」は、日本語で「定量的」と訳されることが多いですが、少し違った角度から訳すと「計測可能な」という意味です。
要するに、自分が今、目標のどの程度まで達成できているのか、が分かるような目標設定でなければならないということです。

どういうことかと言うと、例えば先ほどの例を使うと、「売上を(できるだけ)上げたい」という目標を設定している場合、今年の売上の推移が去年より良かったとしても、それで達成できているのか、他人には分かりません。(おそらく本人も分かっていません)

・軌道修正が可能

 しかし「新規の売上件数を30%増やしたい」という目標を設定している場合は、例えば去年より20%増しで推移してたら、あと10%のギャップを埋める行動が必要となります。

定量的に、そして計測可能な目標設定をすることで、軌道修正が可能になるのです。

3 Attainable:達成可能な範囲

目標の達成には、最後までモチベーションが維持できていることが欠かせません。
しかし、高すぎる目標を設定してしまうと、達成する前に早々とあきらめモードに入るでしょう。

「どうせできっこない」というレベルの目標を設定すると、無意識レベルで失敗をイメージしてしまいます。できない理由を探してしまいます。

・あなたが達成できると信じているか

 もちろん、他人の目には高すぎる目標に見えても、本人が達成可能だと信じられる目標なら何の問題もありません。
問題はあくまで、あなた自身が達成できると信じているかどうかなのです。

4 Realistic :現実的

あなたの努力が、狙った結果に結びつくかどうか、そこには不確実性が入り込みます。
それはどんな目標でも同じです。
しかし、あなたの行動が目標の達成にリンクしていない場合、それは非現実的な目標だと言えます。

例えば、あなたが営業件数を2倍に増やすことで、新規の売上件数を2倍に増やすということであれば、それは理にかなった現実的な目標だと言えるでしょう。
営業件数と売上件数には、明確な相関関係(因果関係)が認められるからです。

・努力の方向を間違えない

 しかし、あなたがいくら徹夜でパンフレットを綺麗にデザインし直しても、売上件数を2倍に増やすことは難しいでしょう。
もちろん、多少の因果関係はあるかもしれません。

例外的に、パンフレットのデザインで売上件数が大きな影響を受けている場合はあるかも知れません。
しかしそうでなければ、明らかに努力の方向が間違っています。

現実的というのは、その行動が、目標の達成にとって合理的かどうかです。
 高いモチベーションを持って情熱的に目標設定すると同時に、冷静で論理的な判断が求められます。

5 Time-bound:締切を意識

「デッドラインラッシュ」という言葉があります。
 どんなベテラン作家でも、締切がなければ良いペースで著作を書き続けることは難しいと言われています。
 人間は締切があるからこそ、どうにか間に合わせようとして、知恵を絞るのです。

・夢に日付をつける

 ワタミの創業者で、現参議院議員の渡邉美樹さんは、「夢に日付をつける」ことが目標の達成には何より重要だと説いています。
これも言い換えると、締切の効果のことです。

上記で例に上げた「新規の売上件数を30%増やしたい」という目標も、「来年の3月までに新規の売上件数を30%増やしたい」という目標にすれば、より力強い印象になりますよね。

ビジュアライズされている

「S.M.A.R.Tの法則」は、提唱されてから既に40年ほど経過しております。
もちろん今でも十分に効果的ですが、ビジネスに限ると少し不足している部分がありますので、それを何点か補足します。その一つ目が、この「ビジュアライズ」ということです。

・目に見えるかのようにありありと描く

 ビジュアライズとは「見えるように描く」という意味です。
先ほど目標を達成するためには、達成した姿をありありとイメージできることが大事だと言いましたが、そのためには、「言葉」だけでなく「画像」として見えるようにしておくとさらに効果的です。

海外進出が目標だとすれば、行きたい国の画像を手帳の中に貼っておくのも良いでしょう。
今なら、グーグルで検索すればどの国の画像でも簡単に手に入ります。
その写真をコピペしてホームページに使うのは問題がありますが、プリントアウトして自分の手帳に貼ることには何の制限もありません。

・ビジュアライズのコツ

 この時のコツは、その画像が自分のモチベーションを高めてくれるかどうかです。
言葉で目標を書く場合も同じですが、その写真を見るだけで目標を達成した自分の姿を想像できるような画像であれば、あなたの目標達成を強くあと押ししてくれるでしょう。

もしどうしてもしっくりくる画像が見つからない場合は、自分で描いても問題ありません。
もし絵に自信がなければ、絵が得意な友人に書いてもらってもいいでしょう。

いずれにせよ、画像というものは言葉よりも多くの情報や感情を伝えてくれます。
これを賢く利用することで、目標の達成意欲を高めるのです。

その場に行く

ここで目標達成の筋道を、一度簡単に整理しておきます。

第一歩は、どうしても自分が達成したい目標を設定すること。
その目標を達成したければ、関連した情報をたくさんインプットすることが必要。

目標を具体的な言葉にし、画像などを使いありありとイメージすることで、高いモチベーションと、情報をキャッチする無意識のアンテナを立てることができる。
大づかみに言うとこのような流れです。

・その場に行くことで得られる情報は貴重

 つまり、具体的にイメージを描くことが、目標達成のキーポイントなのです。
そのためには、具体的に目標を言葉にしておくことや画像を使うことも有効なのですが、「その場」に行くということもまた、効果的だと考えられます。

例えば「東大合格」という目標を立てたとしても、東大がどんな場所なのか知らなければ、具体的にイメージしようがありません。
東大に合格した自分の姿をありありとイメージしようとすれば、前年の東大の合格発表に出かけることが非常に有効でしょう。

その場の高揚感、合格した先輩たちの交わす会話、親や先生達のねぎらいの言葉など、その場に行くことで得られる情報は貴重で、そして大量です。

・動画や小説も有効

 売上を上げて出世したい、という目標の人なら、部長の椅子に座ってみてもいいでしょうし、いずれ起業して上場させたい、という目標の人なら、他社の上場記念パーティーに行ってみるのもいいでしょう。

しかし、その場に出かけることが物理的に難しい場合もあります。
そういう人には関連する「動画」を見たり、「小説」を読むことも有効です。
同じ目標を持っている、または目標を達成した人たちの「コミュニティー」に参加することも効果的でしょう。

会社の目標と合致している

個人目標のメリットや立て方を説明してきましたが、ここで一旦立ち止まって、何のために個人目標を立てるのか(立てさせるのか)ということを考えてみましょう。

もちろん、個人の成長や出世など、個人の有意義な人生のために、個人目標を立てるのは構いません。
しかしビジネスマンとしては、やはり働いている会社の目標を達成させることを、上位の目標として意識していなければなりません。

・「収益増加」とリンクさせる

 何も難しいことではありません。
 おそらく、ほとんどの会社は「収益増加」を目標としているはずです。
もしくは収益増加を上位目標とした、下位の目標(例えば営業力強化や、コスト削減など)が設定されているはずです。これらの目標と、自分の個人の目標の整合性を取れば良いだけです。

基本的に、あなたが仕事のパフォーマンスを高めれば、それは会社の収益に何かしらの形で貢献します。
あなたの目標は「TOEICの点数100点アップ」でも「AIのプログラミングのマスター」でも、「財務諸表を読めるようになる」でも「ディベート力の強化」でも構いません。
ビジネスマンとして、あなたがレベルアップすることを、会社の収益につなげれば良いのです。

・目標を公言する

 そしてその目標を公言しましょう。
公言することで協力を得られるというメリットもありますが、さらに、あなたの目標が会社にとってプラスになると判断されれば、もしかすると「TOEIC」や「AIプログラミング」のセミナー受講料を会社が負担してくれるかも知れません。

会社の収益につながると判断されれば、「英語力を使った新サービス」の企画の話に発展することだって十分ありえます。

・あなたも会社も変わるコツ

 そうです。あなたが目標を立てて、それを公言して実行し始めることで、会社も変わるかも知れないのです。

そのコツはたった一つです。
 「あなたの目標達成が、会社の収益につながること」
 それを忘れないようにしましょう。

注意点

目標を立てて公言することにも、一つだけデメリットがあります。それが、「できなかった時に自信と信頼をなくす」ことです。

もちろん達成できなくても、目標を目指すこと自体に意義があります。
しかし、あまりにも高すぎる目標は、端からやる気を無くさせます。
周りの人からも「分不相応」だと思われ、達成できなかったら「ほら見ろ」とばかりに信頼を落とします。

・誰もが応援してくれるとは限らない

 また、あなたが率先して動き出すことは、何も変えたくない「守旧派」には面倒がられるかも知れません。
あなたが前向きに動き出すことは、直属の上司には自分を追い抜くかもしれない「敵」認定されることも考えられます。誰もが応援してくれるとは限らないからです。

このような悪い結果を避けるためには、以下のことを守るようにしてください。それが「下位目標にブレイクダウン」させることです。

・「下位目標」に分解することが重要

 「険しい丘に登るためには、
 最初にゆっくり歩くことが必要である。」
 16世紀のイギリスの劇作家、シェイクスピアの名言です。

このコラムに沿って正しく目標を立てたあなたは、いずれその目標を達成するでしょう。
しかし自信を失くしたり、周囲の応援を得られなければ、いずれモチベーションは底をつきます。
そうなる前に立てた目標は小さな「下位目標」に分解することが重要です。

・勝ちグセをつける

 この小さな目標を何度も何度も達成している内に、あなたは自信を強めることができます。
これまで大きなことを成し遂げたことがなく、自信を失いかけていた人も、自信を取り戻すことができます。
あなたのことを認めていなかった周囲の同僚や上司も、あなたを認めないわけにはいかなくなります。

すべては「最初にゆっくり歩くこと」から始まるのです。

さいごに

個人目標の設定について述べてきましたがいかがでしたか?
これまで「なんとなく」目標を立ててきたけど達成できてこなかったという方、その理由がわかったのではないでしょうか。

ビジネスをやっている以上、どうしても会社の目標を達成することが仕事になります。
しかしあなたは、単なる会社の歯車ではないはずです。
あなたが会社の収益につながる個人目標を立て、それを達成すれば、会社はそれを評価せずにはいられません。
あなたが変わることで会社も変わるのです。
そのためにはぜひ、ここで取り上げた方法で、正しく目標設定を行ってください。

次回は「成長のストッパーの外し方」を説明します。