005

社長直轄のメリットとワンマン経営の弊害

water

バーチャル経営塾『2代目社長の生き残り組織再生論』

 

005 

社長直轄のメリットとワンマン経営の弊害


「会社を大きくするためには部下に任せたほうが良いことは解っている、しかし今はできるだけ社長の直轄で経営を進めたい。」そんな悩みを抱えている経営者は多いようです。

そこで今回は、社長直轄で経営をするメリットと、その行き過ぎとしての「ワンマン経営」または「カリスマ経営」の弊害について解説していきます。
心当たりがある方は、ぜひ熟読してくださいね。

社長直轄は悪なのか?

「権限委譲」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
会社を大きくするには社長が現場にいてはいけない、ということをよく耳にしますよね。

社長が社長にしかできない仕事に集中するために現場の指揮監督を部下に任せる、そのことを権限委譲と呼びます。
社長直轄は権限委譲とは真逆の方向性です。
では本当に社長直轄は、どのような場合にも「悪」なのでしょうか?

中小企業の場合

『下町ロケット』という小説があります。
最近ではドラマの方が有名かも知れませんね。
下町にある中小企業の奮闘記を描いた物語です。
ではあの物語に出てくる工場は、果たして「中小企業」といえるのでしょうか?

・下町ロケット

 実は下町ロケットに登場する「佃製作所」は、売上100億円、社員数200人程度という設定です。
もちろんパナソニックやトヨタに比べると小さいかも知れませんが、地方では十分「大企業」と呼ばれる規模でしょう。
その規模の会社であれば、確かに社長が現場に時間を取られすぎるのは経営にとってマイナスかも知れません。

・社長直轄「しかない」

 社員数が100人を超えるような会社では、権限委譲が喫緊の課題かも知れませんが、小規模事業の場合は、社長直轄で経営をすることは決して間違いではありません。
というかそれしか方法がない、これが実態なのです。

・中小企業のリアルな経営

 商工会議所の集会に東京からお偉い先生がやってきて、知的財産やらナレッジやらと言われても、多くの社長さんはピンとこないのが現実ではないでしょうか。

そんな難しい経営用語を使わなくても、
 「この会社は入金が遅れ気味だから早めに請求書を出しておこう」とか、
 「あの会社は最近、息子さんに事業承継したみたいだから一度顔を出しておこう」とか、
 そんなリアルな日々の経営は、社長直轄にならざるを得ないのです。

新人さんの教育をするのも社長なら、その新人さんを雇ったのも社長です。
営業して売上を獲得するも社長なら、お得意さんに商品を運ぶのも社長です。
もちろん厳密には、奥さんだったり息子さんだったり、昔から勤めているパートさんだったりするかも知れません。
しかし社長直轄であることに変わりはありません。

会社を変えたい時

何十年も会社を経営してきて特にこれといった課題もない、売上も収益も順調、そんな会社は滅多にありません。
人口減少やグローバル化による環境の目まぐるしい変化は、都市も地方も関係なくこれからも進んでいくでしょう。
そんな変化の時代で、去年までと同じことをこれからもやっていては、売上・収益の維持すらおぼつかないのです。

・改革を進めるのは社長しかいない

 会社を変えようとしたら、誰かに任せてもやってくれません。
その仕事は社長が前面に出て推進していく必要があります。
すると、表でも裏でも批判を受けるでしょう。

社長の改革に反対して辞めていくスタッフもいるかも知れません。
売上が下がって一時的に赤字に転落することもあるかも知れません。
そんな逆風の中でも、会社を良くしたいと思って改革を進めるには、社長直轄で会社を統率するしかないのです。

改革が済んで平時に戻れば、また権限委譲して社長はマネジメントに専念しても良いでしょう。
しかし会社を変えたい時には、直轄経営が必要なのです。

社長直轄のメリット

会社が社長直轄で運営されることによって、どんなメリットがあるか確認してみましょう。

・決断が早い

 採用面接を社長が行っている会社では、どの人材に内定を出すべきか、社内で会議を行う必要がありません。
あらゆる決済を社長直轄で下している場合、そもそも稟議を通す必要もありません。
新規事業へ取り組むのも、社長の鶴の一声で決まります。

会議をして、全員とは言わずとも大半を納得させるために「説明」をする必要もありません。
納得しない社員を気遣う必要もないでしょう。
そしてチャンスを掴むのも早ければ、間違ったと気づいた時の撤退もまた早いのです。

・責任の所在が明確

 社長直轄で経営が行われている会社では、大きな組織で起きがちな「責任のなすり合い」は起きません。
特に旧来の日本型組織の場合、会議の空気でモノゴトが決定してしまうことが多いものです。

会社が大きくなり、創業から時間を経るに連れ、空気を乱すような言動は嫌われるようになり、場の雰囲気に支配されるようになります。
山本七平の『空気の研究』から早40年以上経つにも関わらず、日本人は相も変わらず同調圧力に弱いようです。

大きな組織を経験したことのある方ならお解りいただけると思いますが、責任のなすり合いは、会社にとって不毛以外の何物でもありません。
しかし社長の直轄経営なら、決めるのも社長・責任を取るのも社長です。
責任の所在がはっきりしているからこそ、部下は思い切って仕事をすることができるのです。

・統率(ガバナンス)の強さ

 社長直轄の組織には、隅々まで社長の目が行き届いています。
もし手抜きや気の緩みがあっても、社長が厳しく律することができるでしょう。
そのため、未然に大きなトラブルやミスを防ぐことができるのです。
近年特に重要視されている「ガバナンス」の強化は、社長が直轄経営する会社には無縁です。

・高い士気

 カリスマ性のある強い社長の元で働く社員は、社長に憧れ、社長から評価されることを望むため、高いモチベーションを維持することができます。
織田信長の下で死に物狂いで働いた、羽柴秀吉や明智光秀などが典型ですね。

「この人のためならどこまでもついていきたい!」
 そう考える社員は、会社にとっては使いやすく、そして実際に高いパフォーマンスを発揮する可能性も大きいでしょう。

ワンマン経営のデメリット

メリットがあればデメリットもつきものです。
社長直轄の統率の取れた経営も、行き過ぎると「ワンマン経営」と呼ばれ、会社の行く末に不安材料ともなりえます。
そこでここからは、ワンマン経営のデメリットについて見ていきましょう。

・間違った方向に暴走

 社長がすぐに決断できることは、その決断が正しい時にはとてつもないパワーを発揮します。
しかし、社長といえども万能ではありません。
いつでも必ず正しい選択ができるわけではないでしょう。

ワンマン経営の場合、もし社長が間違った方向に進んでしまったら、誰も止められずに暴走してしまう危険性を孕んでいます。
いくら社長に「責任を持つ」と言われても、会社が潰れてしまっては元も子もないですよね。

・社長に口出しできない

 社長に権限が集中していると、誰も社長の意見に口を差し挟むことができなくなります。
上意下達の指揮命令系統で動いていると、社員側も自分の意見を考えることすらできなくなっていきます。
もちろん社長は、一般の社員に比べて多くの情報と経験を積んでいることでしょう。
多くの場合、その判断は正しいはずです。

しかし社員の意見に耳を傾けることで、思わぬ閃きや正しい判断に行き着くことだってあるはずです。
社長に口出しできない雰囲気に陥ると、自由闊達な意見交換もできなくなり、新しい取り組みが起こりにくくなります。
直轄経営といえども、社員が自由に意見を言える機会と、その意見を聞き入れる度量が欲しいものです。

・パワハラのリスク

 強い指導力で部下を鼓舞し、部下もその期待に応えようと脇目も振らずに仕事に邁進する。
そんな理想的な状況は、決して永続しません。
どんな会社にも、売上・収益が伸びない厳しい時期は訪れます。

そんな時、働くしくみが整っている会社であれば、就業規則や労働基準法に則った働き方ができるでしょう。
しかし社長の影響力が強すぎる会社では、つい無茶な営業や残業などが増えてしまうかも知れません。
場合によってはサービス残業が常態化することも考えられます。

社長の直轄経営の会社がすべてそうなるとは限りませんが、長年ワンマン経営が続いてきた会社では、自分だけ仕事を早く切り上げて残業せずに帰ることはかなり勇気の要ることでしょう。
同調圧力に屈した社員の一部は、会社のパワハラと戦うことを決意するのです。

ワンマン経営者に必要なもの

ではそのような破滅を迎えないためにはどうすれば良いのでしょうか?
それが、次回のコラムで取り上げる「No.2」の存在です。

詳しくはそこで述べますが、簡単に言うと「社長に不足している部分を補ってくれる存在」が、カリスマ経営者には必要なのです。

カリスマ経営者という幻

ここまで何度か「カリスマ」という言葉を使ってきましたが、果たしてカリスマとはどういう意味なのでしょうか?
またカリスマ経営の何が問題なのでしょうか?

カリスマの定義

分かりにくい「カリスマ」について、wikipediaには以下のように書かれています。

"預言者・呪術師・英雄などに見られる超自然的・または常人を超える資質のこと"
 出典:wikipedia

少し曖昧な表現もありますが、一般的にこのような超人的素質を備えた経営者のことを「カリスマ経営者」と呼びます。
ワンマンで暴走してしまう経営者の中には、このような「カリスマ型」の経営者が少なくありません。
特に一代で会社を大きくした創業経営者は、このタイプが多いようです。

・カリスマ的経営

 カリスマと言うと、ドイツの有名な社会学者であるマックス・ウェーバーのことを思い浮かべる人が多いでしょう。
彼はその著書『経済と社会』の中に、「カリスマ的支配」として以下のように記しています。

"日常的なものをこえた非凡な資質に対する畏敬の念に基礎をおく支配関係"
 出典:コトバンク

補足して言い換えると、話し合いや契約などで取り決めた法則ではなく、社長個人の超人的な素質に対する憧れや怖れを基にした経営を、カリスマ経営と呼んで良いと思います。

・カリスマ経営の脆さ

 過去にカリスマと呼ばれた多くの人物がいました。
しかしその大半が、暴走と破滅を迎えています。
このように漠然とした社長の魅力を頼ったカリスマ経営は、情熱的な求心力と高いパフォーマンスを期待できますが、長続きしない点に留意しておくべきです。

まとめ

社長直轄経営が単純に「悪」ではないということをご理解いただけたかと思います。
スピードの早さや士気の高さといった、社長直轄ならではのメリットもたくさんありましたね。
しかし何事も、過ぎたるは及ばざるが如しと言います。

ワンマン経営で暴走しすぎないように、そしてカリスマ型の経営から抜け出すために、まず当サイトで学ぶことから始めてみてください。
もし、ここで取り上げたような状態に自社が陥っている可能性があると思われた方は、遠慮なくご相談ください。