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経営計画がブレブレ…「行き当たりばったり経営」の末路

バーチャル経営塾『2代目社長の生き残り組織再生論』

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経営計画がブレブレ…「行き当たりばったり経営」の末路


上司の陰口を言うときに、社員の間で一番ネタになるのが「言ってたこととやっていることが違う」ということです。
些末な事柄ならまだしも、経営計画などを大きく打ち出したにもかかわらず、それが後に何度も修正されるようなら、社員たちが不満を持つことも仕方のないことかも知れません。

経営計画がブレることは、社員から陰口を叩かれることだけがデメリットではありません。
経営計画のブレは、いずれ「行き当たりばったり経営」へとつながり、会社の成長を阻害する要因となるのです。
今回は、そんな行き当たりばったり経営の末路と防ぎ方について学びます。

行き当たりばったり経営のデメリット

前回のコラムでご紹介しました稲盛和夫氏や吉越浩一郎氏の「経営計画不要論」は、正確に言えば経営計画を確実に達成し、業績を高めるための哲学でした。

いわゆる反語的表現を使って、むしろ経営計画の必要性を説いていると捉えてよいでしょう。

しかしそれを真に受けて、経営計画を作らなかったり、経営計画をないがしろにしてしまっては行き当たりばったりの場当たり的な経営となってしまいます。
ここではそんな、行き当たりばったり経営が陥る最悪の状況を確認してみましょう。

倒産の原因!?

高良明著『ビジョナリー会計の戦略と実務: 「企業存続100年」会計が創る黒字経営の羅針盤』によると、
 "ビジョン、経営理念、経営方針といった経営の基軸がない"
"計画経営がなされていない(場当たり経営)"
の2点は、なんと倒産の要因だと述べられています。

・放漫経営につながる

 「場当たり的な経営判断」が続くと、計画的な投資ができず、放漫経営や放任経営につながり、財務面でデタラメに陥っていくというのです。
どれだけ優れた商品・サービスを展開していても、放漫経営を続けていてはいつかは債務超過に陥り、倒産の憂き目を見るかも知れません。

従業員満足度の低下

従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)という言葉をご存知でしょうか?
よく顧客満足度(Customer Satisfaction:CS)という言葉は聞いても、従業員満足度という言葉は
 聞いたことがないという方も多いかも知れません。
意味は、読んで字のごとく「従業員の仕事や職場に対する満足感」のことです。「働きがい」と言い換えても問題ないでしょう。

・従業員満足度の必要性

 従業員満足度が高い会社と低い会社、一体なにが違うのでしょうか?まず、従業員満足度が高い会社は当然ながら雰囲気が良いので、人材が辞めにくくなります。
離職率が高い会社の場合、従業員満足度が低下している恐れもあるのです。

また顧客満足度を高めるために、前提として従業員満足度を高めるという企業も増えています。
というのも、従業員がイキイキと働いていることにより、サービスを受ける顧客の満足度も高めることができるためです。
イヤイヤ働いている人と、楽しんで働いている人、あなたならどちらからサービスを受けたいですか?答えは明白ですよね。

・生産性を高める

 さらに、従業員満足度が高いことで生産性のアップも狙えます。
これも自明のことですが、やりがいを持って働いている人と、そうでない人とでは、仕事に向き合う姿勢が全く違ってきます。
当然仕事のパフォーマンスにも大きな差が開いてくるのです。

そんな大事な従業員満足度ですが、経営トップの場当たり的な経営が続くと、いずれ低下をしてしまいます。
結果として、離職率のアップや顧客満足度の低下、生産性の低下につながることは明らかです。

問題の先延ばし

場当たり的な経営というのは、計画性のない経営のことです。
自社が抱える問題点を正しく客観的に認識し、その問題に計画的に取り組むことができません。

・場当たり的な行動とは

 誰かに薦められた本を読んで実践してみたり、有名なコンサルタント先生の講演会で聞きかじったことを採り入れてみたり、かと思えば、怪しい新規事業に手を出してみたり、会社にとって大事な幹部をクビにしてみたり。

そんな場当たり的な行動は、いろいろなことに取り組んでいるように見えて、実は一番重要な問題からの逃避行動でもあるのです。

・一番の問題から逃げない

 人は自分が抱える一番の課題について、意外にも解っていることが多いもの。
社長の場合も同じです。
例えば、競合他社に追い上げられて新規顧客数が激減していたり、人件費の高騰で利益率が落ち続けていたり、キャッシュフローが悪化して支払いに苦慮していたり。

・問題認識の機会

 そんな重要な問題に取り組むには、それ相応の覚悟が必要になります。
薄々気がついてはいても、客観的な視点ではっきり分析してみないと、本当の状況は分からなかったりします。
日々の仕事に追われている時は、会社の抱える問題点を直視して熟考するヒマはなかなかありません。

問題が自然に解決してくれればいいのですが、そうこうしている内に取り返しのつかない事態に発展することもあります。
だからこそ、経営計画(特に中期経営計画)の作成は必須なのです。

目の前の売上・利益に走りがち

行き当たりばったり経営の特徴として、目の前の(今期の)売上ばかりを追い求める傾向があります。
もちろん売上をあげようと必死になるのは決して悪いことではありません。
いや会社としてはむしろ正常な行動だと言えるでしょう。
しかし、行き当たりばったりの結果、目の前の売上ばかりに目が行くのは良い結果を生みません。

・営業にしわ寄せ

 そもそも売上は、今日頑張ったからと言って今日上がるものでもないでしょう。
大なり小なり、どんな仕事も「商品開発(仕入れ)」→「集客宣伝」→「販売」のような手順を踏むはずです。
もし「急いで売上取ってこい!」と場当たり的な司令を受けたとしても、相当な無茶をしない限り売上を獲得してくることはできません。
営業マンに過剰なしわ寄せとストレスを強いることになるだけです。

最悪の場合パワハラへ発展する恐れも

売上を上げるという行為も、計画を立てて一歩ずつ進めていくことで、過剰な負荷を和らげることができます。
既存客への聞き取り調査で顧客のニーズを掴み、それを商品開発部が商品化し、信頼関係を築いて着実に新規開拓をしていけば、自ずと売上アップは見えてくるでしょう。

このように現実的な販売計画を立てることができないと、売上が低いと気づくと焦りだし、現場(営業)に無茶な要求をすることになるのです。

・「安売りをしてでも売ってこい」

 このような無茶な要求をする会社は、売上が上がらないばかりでなくブラック企業化してしまう恐れもあります。
売上アップのための過剰な圧力が「パワハラ」だと認定される日も遠くないかも知れません。
そうなる前に、行き当たりばったりの販売計画を見直し、冷静で現実的な経営計画を立ててみましょう。

行き当たりばったり経営の防ぎ方

以上で見てきたような行き当たりばったり経営ですが、これを防ぐ方法をお伝えします。

ブレないビジョンを作る

ともすれば、経営は目先の売上や問題解決に追われ、大きな方向性を見失いそうになることもあります。
それはどんな優秀な経営者でも同じでしょう。しかし「ビジョン」があれば、ブレることはありません。

短期的な数字目標や日々の作業は、修正したり変更させたりすることはあるでしょう。
状況に応じて柔軟に対応することは歓迎すべきことです。
でも「ビジョン」はブレてはいけません。

・ビジョンは変わらない

 5年後、10年後、いやもっと先の未来において、自社が社会においてどんな貢献を果たしているのか。
それを言語化したビジョンは、日々の環境の変化とは無縁です。
もしビジョンをこれまで何度も変更してきたとしたら、それは正しくビジョンを描けていないのです。

ビジョンが作れたら、あとはそのビジョンからブレークダウンさせることで、取り組むべき課題や達成すべき目標も明確になっていきます。
行き当たりばったり経営を防ぐ(止める)ためには、ビジョンを正しく策定することが先決なのです。

PDCAをきちんと回す

ビジョン(長期経営計画)ができたら、毎年必ず中期経営計画を立てるようにしましょう。
長期経営計画が、ビジョンや理念といった方向性を示すものなら、中期経営計画は今年の目標や取り組むべき課題を明確に計画したものです。

いわゆる「中計」と呼ばれる経営計画ですが、これがあることで毎年やるべきことがはっきりします。
中計を達成するために社員全員が整合性の取れた行動をすることで、会社は成長していくことができるのです。

・経営計画を見直す

 しかし、経営計画は立てて終わりではありません。
今期の計画を立てる時には、必ず前期の経営計画の内容を見返すことが重要です。
前回の計画の何が達成できて何が未達成だったのか、その原因は何かということを徹底して洗い出しましょう。

そうすることで、自社の弱い部分や改善すべき取り組みも見えてきます。
また経営計画を見る人にも、説得力を持って計画達成意志が伝わります。

・ブレない経営計画=ブレない経営

 そして何より、計画的に一貫性を持った経営をすることができるのです。
ブレない経営には、経営計画を立てることはもちろん、計画のチェックを忘れてはなりません。

計画経営は「運」を呼び寄せる?

このように経営計画を基にした経営を始めると、「運が向いてきた」と言う経営者がいます。
自社が長年取り組んできたことが、ひょんなことから人気に火が点いたり、生き延びるチャンスを拾ったり。

しかしこのような運は、偶然の産物とは言い切れません。
計画的な経営を続けていくことで、社員は成長していきます。
長期的な方向性が分かっているからこそ、チャンスとなる出来事にいち早く気づき、結果としてうまく売上を獲得することにつながるのです。

・自分を過信しない

 計画を立てない経営者の中には、自分の運の強さを過信しているケースも多々見受けられます。
しかしそのような経営者にこそ、経営計画をぜひ作ってもらいたいと思うのです。

さいごに

行き当たりばったり経営の悪影響と、抜け出すためのヒントを解説しましたが、お分かりいただけたでしょうか。
経営計画の必要性を、改めて感じたという方もいるかと思います。
もし、経営計画の策定や実行に不安があるという方は、弊社でサポートいたしますのでお気軽にご連絡ください。