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経営計画は厳密に立てるべきなのか?

バーチャル経営塾『2代目社長の生き残り組織再生論』

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経営計画は厳密に立てるべきなのか?



経営計画の必要性をこれまで解説してきましたが、いざ作るとなると
「どのくらい細かく作るべきなのか?」
ということが問題になります。
経営計画には正解はありません。それどころか、用意された解答欄さえないのです。

どのように作るのかは、完全に作成者の自由です。
しかし、だからこそ経営計画の「厳密さ」について触れておきます。
実際に経営計画を作ろうと思っている(作ってみた)が完成形が見えず悩んでいた方には特におすすめの内容です。

目的を見失わない

経営計画は、完璧に作ることが目的ではありません。
あくまで経営をやりくりするために必要なツールだと思ってください。
にも関わらず、経営計画を作ること自体を目的としている方が多いものです。

ビジョンやミッションの作成は慎重に

初めて経営計画を立てる時には、まず「長期経営計画」からスタートしましょう。
このサイトでは何度も説明してきましたが、長期経営計画とは、ビジョンやミッション、経営理念など会社の大枠の方向性を言語化したものです。

現状分析に時間を使うべきか?

このコラムでも以前解説しましたが、経営計画を作る際によく使われるフォーマットに
「SWOT分析」
というものがあります。

これは、現在会社が置かれている状況を「脅威」と「機会」に分け、さらに軸を自社の持つ「強み」と「弱み」に分けて分析する方法です。

・SWOT分析の落とし穴

 このSWOT分析、これまで何となく自社の状況判断をしていた方にはとても有効な手法なのですが、これには落とし穴があります。
それは時間を使いすぎてしまうということ。

このような分析は、細かく見ていくといくらでも詳細に分析を詰めていくことができます。
しかし、経営計画の目的は分析の細かさや正確さではありません。

・期限を決める

 もちろん的外れの現状分析では、これから先の取り組みに疑問が残ります。
かと言って分析に時間をかけすぎて、肝心の取り組み(プラン)に時間をかけないのでは目的と手段が転倒しています。
現状分析は正しく行うことが求められますが、期限を決めて行うようにしましょう。

数字目標の作成に時間を使わない

経理上がりの経営者などが陥りがちなことに、数字を完璧に作りたがるというケースがあります。
数字は、厳密に入れるべき項目と、ある程度大まかに入れるべき項目があります。
例えば支払利息や家賃などの固定費は正確に見積もることが可能です。

・数字の不確定性

 しかし、売上の予測はある程度の精度でしか作成することはできません。
しかも人件費や外注費用、広告費などは、目標となる売上によって大きく変動する可能性があります。
さらに付け加えると、売上や広告費などは、競合他社によって影響を受ける恐れもあります。

・外部要因に左右される

 農業や飲食業の場合は、その年の気候に左右されることもあるでしょうし、下請けをしている企業は、元請け企業の業績や意向に従わざるを得ません。
運送業や金融業の場合は、外国の政治状況や為替の推移などによっても業績は著しく変動するでしょう。
ガソリンスタンドやタクシー業界は石油の値段によって収益率が大きく変動するかも知れません。

つまり、いくら正確に現状を分析し、適切だと思われる対策に取り組んでも、これらの外部要因を完全に取り除くことはできないのです。

・1~2割ほどの「遊び」

 とはいえ数字目標なんて無駄だというわけではありません。
目標売上や、獲得顧客数などは、ストレッチのかかった目標をロジカルに積み上げましょう。

しかし、何らかの理由で思いの外業績が伸びたり、逆に落ち込んだりすることも考えれば、1~2割ほどの「遊び」を盛り込んでおくくらいが無難でしょう。

今後の取り組みに時間を使う

経営計画の最も大事なポイントは「これから先の取り組み」です。
そもそも「計画」というのは、「将来のある時点におけるゴールを設定して、そこに至る工程を企てること」です。

そのために、経営理念を参照し、現状を分析するわけです。つまりこれから先の取り組みこそ、時間を割くべきポイントだと肝に銘じましょう。

ロジカルに計画

では肝心の取り組みについては、どのように作成すればよいのでしょうか?

生産性の向上

「24時間戦えますか?」とは、某栄養ドリンク剤のCMで使われたキャッチフレーズです。
89年の流行語でもあるので、多くの人は記憶にあるのではないでしょうか?
当時はバブル崩壊前夜のイケイケの時代です。
働けば働くほど収入は増え、日本経済のパイであるGDPも拡大を続けていました。

しかし当時と今とでは経済も社会も状況は一変しています。
あの当時は違和感なく受け入れられた言葉ですが、これを今使うと「ブラック企業」化まっしぐらでしょう。

・生産性の向上が欠かせない

 現代は少子高齢化が進み、経済のパイもその後の約20年間ほど横ばいを続けています。
そんな中アベノミクスの効果か否かはさておき、あらゆる業界で人手不足が深刻化しています。

経営者にとっては生産性の向上が喫緊の課題です。
もちろん、安くて優秀な人材の確保は、急場しのぎには必要です。
外国人労働者の受け入れ問題が騒がれていますが、それも一時的には必要かも知れません。

しかし中長期的な視野で見ると、労働力人口の減少は論を待ちません。
この先、バブル以前のように急速な景気拡大が見込めない以上、投入する資本を減らして収益を上げる方向性、要するに生産性の向上は欠かせないのです。

・努力の方向を誤らない

 前置きが長くなりましたが、今の時代に作るべき経営計画には、「24時間戦えますか?」といった精神論は通用しないのです。
それよりも、いかに生産性を向上させるのか、という方向性を持ち、ロジカルな思考を積み上げた骨太の計画が求められています。

どのような分野の会社でも、収益を増やすことが至上命題です。
そのためには努力の方向を誤らないようにしたいところです。

さいごに

当コラムのタイトルにある「経営計画は厳密に立てるべきなのか?」という問いに答えると、「数字はある程度遊びがあって良いが、取り組み計画は厳密に立てるべき」だという答えになります。

経営計画に答えはありません。
「計画は5%、実行が95%だ!」とは、世界的な自動車メーカーの社長の言葉です。
納得のできる経営計画ができたら、あとは何がなんでも達成させるという強い気持ちで取り組んでください。